0章:はじめに・・これは記事ではない。カンファレンスです。
CD14、蓋を開けたら、空だった
生理が来てしまった。CD1だ。
卵胞の成長サイクルと、生理周期がズレていないという人で、排卵がCD14ならば、
CD2あたりで、Clinicに行き誘発スタートのタイミングを主治医と相談するだろう。
CD8でDr:「もう少し様子を見ましょう」となり
CD12でトリガー:「明後日に採卵しましょう」となる。
CD14で採卵。
しかし、開けてみたら、卵子は入っていなかった。
卵胞という”見た目”は整っていたのに、中身が空っぽ(=空胞)
この記事は、カンファレンスです。文字数:10,590語、読了時間:56分(目安)
厨房に入る許可
主治医は言う、「採卵できませんでした。顆粒膜細胞がありませんでした」とか
「顆粒膜細胞はあったのですが、中身がありませんでした」とか言われる人は少なくない。
また、仮に採卵は出来ても受精確認が出来なかったり、受精はできたが凍結までは至らなかったとかも少なくない。
前周期の採卵も同じだった。
そして金額は?十万円、そして連続では・・本当に虚しくなるだろう。
その結果は・・料理で例えたら「出された皿」の上の話だ。
当然・・お会計をしなくてもならない。どんな料理でもだ。
料理は、厨房の中で行われる。
いい素材、それに合わせた調理方法、シェフの頭の中にあるフレキシブルなレシピ。

仮に、あなたが厨房の入るのを許されたとしよう。
『自分の料理が出来るまでの過程』をすべて見れる。
フライパンを振るシェフの隣にいることも許された。
そんなシェフの頭の中の構造をみたいとは思わないか?
採卵のプロセスと、「羽付き餃子」を焼くプロセスは構造が似ていると私は思っている。
あなたに送る、最初の問い
これは、いったい何が悪かったのか?
その「料理の時系列」で
何が見えていなかったのか?と考えてみたらどうだろうか?
「自分の採卵プロセス」、あるいは
自分がキッチンで「餃子を焼くプロセス」を本質を抜き出し、対応策を考えてみてください。
「空胞」というのを餃子に例えると、
フライパンに餃子がこびりついてしまい、フライパン返しでキーィ💢となって力技で剥がしても
剥がれなかったことと同義だ。
その時・・レシピ通りにやったのにとあなたは言うかも知れない。
優しい旦那さまは、皿の上に置かれた餡の山に箸をいれて「口の中に入れれば同じだから」と言ってくれるかもしれない。
でも もしそれをお客様に出すならば・・・?
「羽付き餃子」がいいとか「Simpleな蒸し餃子」の方がいいとかそういう話ではない。
餃子のプロ(=誘発が上手なDr.)がレンジの火に、餡をつめた餃子を置き、
何に注意して蓋をしめて、何を感じ、最後に蓋をあけて
フィニッシュまで持っていくのか?採卵プロセスの話を交えて話していこう。
〈余談〉
最近はスーパーで水も油もいらない餃子が売っているが、私はそれでも失敗をした。理由は焼く個数を間違えたからだ。
餃子ならば何でもいいという人ならば冷凍餃子でいいが、
大切な旦那さんに「プロみだいで美味しいと言ってもらえる羽付き餃子を焼きたい」
という最初の自問(=Primary Issue)をもち、
それを料理の途中でIssueを更新していく賢い主婦のあなたに送る。
なお、餡づくりの時点でもう失敗した事例も書く。
採卵だったら・・その周期はそもそも採卵そのものが「ん?」ということと同義だ。
1章:なぜ?羽付き餃子と採卵は似ているのか?時系列をみて欲しい。
「排卵促進・抑制・トリガー」、そして「焼く・蒸す・待つ」
まず、なぜ?羽付き餃子と排卵誘発(=COH=Controlled Ovarian Hyperstimulationの略で調整卵胞刺激の意味)
この2つは似ているのか?を説明していいでしょうか?


うちの新規の患者さんでも自分自身の治療を経験してよく知っている人ほど、
初診でデータを持ってくるとき、無意識のうちに同じ整理の仕方をする。
「排卵促進。排卵抑制。そしてトリガー」。薬剤をこの3つの構造に分けて説明してくる。
それを各周期で解析の材料として出すのだ。
時系列で3つのステップからなる。
採卵周期の COH(=卵胞調整)
採卵日に向けて「蓋」をあける
羽根付き餃子の調理
フライパンの蓋をあけてから追い油をいれる
羽付き餃子の焼きも同様に
「焼く、蒸す、待つ」の3つの構造になっている。
羽付き餃子は蒸しモノじゃない!揚げモノだ!
つまり蒸しモノから揚げモノに、蓋をあけた時に変容する。
だから揚げ物にするには何がいるのか?考えてみて欲しい。
「差し水」ではなくて、「差し油」だ。
これは、まさに排卵誘発_COHと同じだ。
蓋をあけて水分を飛ばし、油で焼き上げて揚げ物にする。
黒焦げと空胞、二つの失敗

レシピ通りに時間をみてやったのに―
当然、黒焦げのリスクがある。採卵でいったら、卵胞壁に卵子が張り付いてそのまま「まっ黒焦げ」になる現象だ。
逆もある。卵子が成熟していないままGV卵以前の状態で、採卵針で吸い上げても・・そりゃ・・餡は空っぽだ。
ウォッシュするから大丈夫?・・そういうレベルではない。
10回ウォッシュしようと20回ウォッシュしようと結果は変わらない。
(少し細かい話ですまない。スルーしてください)
何が言いたいのか?というと・・空胞の人を否定しているわけではない。若い人でも有り得るからだ。
Q:空胞って何?
A:日本で空胞と読んでいるものには、広い概念で含められてしまう。
- 卵胞液はあるが、卵子が回収できなかったケース
- 未熟卵だったケース
- 変性卵だったケース
採卵でトリガーをかけて採卵までの間で、時間を1時間2時間引き伸ばしても・・トリガーの前の段階で失敗していることが少なくない。
羽付き餃子で言ったら、最後にフライパンの蓋をあけて油を差す前に、もう餃子は失敗しているのと同じだ。
どこで?失敗したのか?それを考えて欲しい。
ちなみに餡づくりで失敗する主婦は、野菜の水分を抜くことを面倒くさいから端折ったのが大きな原因だ。
採卵だったら、CD2で出てきた卵胞に既に顆粒膜細胞が十分についておらず、その後のCOHで刺激をいれてもスムーズに育たない要因を持っていることと同義だ。
卵胞の成長スピードが薬剤の投入と1:1ではないのに、強引に採卵まで持っていくと
・・採卵はできるが、採ったら空っぽとか、培養ステージで分割ストップしてお金だけ出ていくことになる。
きつい表現をしてすまない。現実のFACTをみて、そこから次は何ができるか?考えて欲しいのだ。
つまり羽付き餃子ならばフライパンに蓋にしている時に蓋の下で何が起こっているのか?
プロの餃子職人の智慧を学んでほしいのだ。
それはそのまま採卵周期でも同じだ。蓋を閉めている時に蓋の中の卵胞とその中の卵子がどうなっているのか?
想像できるのが良い主治医だと思う。
時系列でいったら
〈採卵〉CD5からCD12(トリガー日)までが蓋がされている。
〈餃子〉T5からT12(フライパンの蓋をあける時)まで蓋がされている。
蓋の中で、もう決まっている。
採卵だったら、蓋がしまっている間、蓋の中でどんなことが行われており、主治医は何を感じて何をみてるのか?
知りたくないか?
餃子だったら、蓋がしまっている間にプロの料理人は何を感じて何をみているのか?知りたくないか?
★ヒント:
餃子を焼くときに家庭の主婦は、「時間」をみているが、プロの餃子焼き職人は、「音」の変化に耳を立てている。
家庭用の蓋はガラスだけど、プロは使い込んだアルミの蓋だ。床に落としてボコボコになっている。
それでも蓋の中を心の目でみている。「音」がアシストしてくれるからだ。
2章:羽根水の配合に、答えはもう仕込まれている
羽根水の配合は、なぜ味と食感を決めるのか?

採卵の話で、「羽付き餃子」を一つのアナロジーとして使っているのですが、採卵(=OPU)は結果です。
その前に卵胞刺激(=COH)というプロセスが長く横たわり、その結果が採卵です。
餃子の話も同じだ。
プロセスが大事。
餃子のプロと家庭の主婦の大きな違いの一つがある。前章では「音」に鈍感と書いたが、
美味しい餃子のコツは、「羽根水」で決まるそうです。パリパリとした薄い膜(=羽根)を作る為に水に小麦粉や片栗粉などのデンプンを
溶いた液体調味料。その羽根を作り出す為の水だから「羽根水」。最初の段階でそれを仕込んでいく。
その構成で全体の設計図ががらっと変わる。
- パリパリ・サクサク系なら「薄力粉」お店のようなレース状の、軽くて香ばしい羽根になる。
- ザクザク・バリバリ系なら「片栗粉」厚みがあり、食べ応えのあるクリスピーな羽根になる。
- ハイブリッド(小麦粉×片栗粉)両方の長所を合わせた、時間が経ってもサクサクが続く最強のブレンドになる。
最初から、ネライを定めている訳だ。
この「羽根水」にはプロの直伝のコツといて、油を数滴垂らすそうだ。
後述するが、私は餃子が上手いので有名なお店で女将に聞いてきた。だから貴重な一次情報だ。
羽根水は、水だから多すぎると餃子がベチョベチョになる。火に対しての水 つまり抑制ということになる。
抑制のイメージで、最終的な餃子の出来ががらっと変わるわけだー水分コントロールー
排卵抑制のタイミングは、なぜ結果を左右するのか?
これも採卵という結果に向かう卵胞刺激(=COH)と本当に似ている。
例えば アンタゴニスト法を例に取ると、年齢の高い患者さんならば、排卵の抑制(=アンタゴニスト製剤)をいれる
タイミング一つで成績はガラッとかわる。
早くいれすぎると駄目であり卵胞は育たなく(未成熟)、
逆に遅すぎると 卵子が焦げてしまう(過炎症)
抑制と炎症のバランスを上手に取っていかないと、卵胞とその中の卵子のバランスが悪くなる。
餃子の餡と皮みたいなものだ。 皮=卵胞、餡=卵子。
餃子でも噛んだ時に、ジワーっと小籠包のように肉汁が出てくると見た目も味も最高だ。
餡が生っぽいのは、採卵でいったら極端な未成熟卵(GV未満)や変性卵(D)
餡が火が入り過ぎると、採卵でいったら過炎症の卵なり・・卵子のDNAは死滅状態近くになってしまう。
上手く、培養ステージまで行ったとしても分割は途中で止まるだろう。
トリガーの前に、もう決まっている?
Issue(最初の質問)
じゃあ、採卵前のトリガーだけが悪いのか?(=餃子で言ったら蓋をあけてフライパン返しで返すのが悪いのか?)
その前にもう決まってしまっているのだろう。
どこで決まるのか?
Q:餃子はどこで決まるのか? 蓋の中のどこでフェーズが変わるのか?
Q:卵胞刺激(=COH)ではどこできまるか? 蓋の中のどこでフェーズが変わるのか?
次の章で観ていこうと思う。このIssueを更新していこうと思う。
ヒント:餃子のプロが羽根水に数滴の油を垂らすのはなぜか?
水と油は本来 絶対に混ざり合わないが、あえて数滴いれて混ぜてから一気にフライパンに注ぐことで
科学的かつ劇的な効果がうまれる。プロの奥義だから知っている人は少ない一次情報だ。
理由1:綺麗なレースを作る為。
▶ 水に浮いた油の粒がフライパンの上で弾けることで、薄皮の上であちこち絶妙な隙間がでてレースになる。
理由2:ここが大事。蓋の下で水分が飛んだ瞬間に、自動で「揚げ焼き」に切り替える為。
▶ 蒸しモノの餃子が、自動で「焼きモノ」への変容していく。水が飛んで「粉」と「油」即座に反応して
自動的にパリパリの焼きモノの餃子に変容している魔法。
理由3:蓋をあける前でさえ、フライパンのこびりつきを防ぐため。
▶ 蓋をあけてフライパン返しで剥がした時に、お皿にスルッと綺麗に剥がれやすくなる。
特に 最後の「理由3」は、採卵の空胞で、卵胞壁から卵子が剥がれないのと同じメカニズムだ。
3章:蓋の中で何が起こっているか?
餃子プロセスでは、蓋の中で何が起こっているのか?また COH(=卵胞刺激)の蓋の中では何が起こっているのか?を
見ていこうと思う。このあたりがScienceの素晴らしさだ。
料理人はサイエンティストである
ちなみに、私は料理人はScientistだと思ってる。すべてが計算されており、再現性がやり難い料理の微調整を丁寧に職人ぽく
やっているからだ。一度だけなら美味しい料理は誰でもできる。
でも、それをコンダクターとして自分の直感に頼らずに科学的にやり、同じ味・同じ見た目の料理を一日にいくつも作り上げる。
素晴らしいことだと思う。
餃子屋の女将の秘伝

女将の焼いた羽付き餃子
下町の町中華の店主(餃子で有名)
なお、この餃子の情報は、私の知り合いの下町の町中華の店主(餃子で有名)から餃子焼きの秘伝を教えてもらった。
82歳のおばあちゃんではあるが、重いチャーハンをつくるために,フライパンで右腕でフリ続ける猛者だ。
インテリに育てた息子(早稲田政経卒)も店を手伝っているが、総料理長である母には頭が一切あがらない。
私: 「おばちゃん、なんでこんな私に・・そんな秘伝を教えてくれるの?」と聞いたら
女将:「あんたが、コロナ下のときでも、店によく来てくれて・・酒をたくさん注文して飲んでくれたからさ」
「あの時は、店の常連でも来なくなったよ。酒を飲んでくれるのを前提で
この金額で出すとおとうちゃん(=亡きオーナーシェフ)決めていたんだ。
息子の代になったら値上がりするよ。カカカっ」と笑って教えてくれた。
時系列でいったら
〈採卵〉CD5からCD12(トリガー日)までが蓋がされている。
〈餃子〉T5からT12(フライパンの蓋をあける時)まで蓋がされている。
餃子のプロの女将は、最初にこういった。
「フライパンの蓋の下に何が起こっているのか?、自分の目を信じずに音で聞くんだよ」
「音は正直さ。」
抽象度があまり高くて、私はよく理解できなかった。
私: 「歌舞伎の師匠みたいに言われてもよくわからないから、もっとわかりやすく言ってください。」と答えた。
女将:「あたしは、他所の店の餃子の作り方は知らない。うちの客の口に合えばそれが正解だと思っている。」
餃子の蓋の中で起きていること(T5→T8→T12)

・・・・
羽付き餃子の話から始めよう。
T5からT12を見て欲しい。
この期間は、蓋を閉めている。
上図boxの高さをみてほしい。
T5!(タイミング)
蓋をしてから、餃子のPROは音を観察する。過程の主婦ならば透明の蓋から餃子の縁の見た目を観察すればいい。
餃子を並べてから中火で4-5分した後に蓋をしたはずだ。その後に2-3分だけ「音を聞く」
ジュージュー♪ ▶ 焼きが入る
ボコボコ♪ ▶ 沸騰音で水分が飛んでいくのを確認。
T8!(タイミング)
この時に、分水嶺がやってくる。そこをきっちりと見分けるべしと女将は言う。
上記の音が消えた後に焼きフェーズから、蒸しフェーズに世界は動く。
ここを見逃すなと女将は言う。
あなたは蓋をしめている。
蓋の下では餃子は蒸しに入っている。ここから4分だ。▶ 見る・音を聞くべし
やがて、音は静かになり、水分は消えて・・
高くて軽い音がパチパチ♪と聞けてきて水分が消えてゆく。羽根水が消えてゆく。
その後に・・
チリチリ♪と油が弾け始めるサインが出てくる。
さて・・ここで欲張ると失敗する。
何処で蓋をあけるべきか?!究極の料理センスが問われる。
さて、上記を今度は、COH(=卵胞刺激)に転用しよう。
図をみてください。

誘発のモデルは、(内服+FSH注射)+アンタゴニスト法だ。
それもFSH注射の容量を一定にするモデル。途中CD8あたりで増量をしないケースであり、レイト(遅い)アンタゴニスト投入だ。
※ 高齢の患者用のPPOS法ならばどう図が動くか想像してもいい。あなたの思考が活性化しているサインだ。
カンファで私が見せるPC画面(リアル)
ちなみに会員さんのカンファ(On-Line/対面)ではこの絵のboxに薬剤を書き込み、
図の上に FSHとLHカーブを描き、差がどう狭まっていくか?
ビジュアルで一発で分かるように書いていく。OneNoteというソフトを使ってる。お互いに書き込めるから。
図の下には私がEXCELで管理している「ログブック(=プログレスnote)」のスクショを貼り付けてOneNoteで見せながら
オンラインでも話し、対面カンファでは大きなモニターに写しながら壁打ちトークをしている。
「ログブック(=プログレスnote)」には、患者さんの主治医のコメント、処方した主治医の考えの背景、及びそれを聞いた患者の感情が
書かれている。これだけ見ても診察室の風景がすべてわかるように私が作り上げている。
いつでも『ALWAYSビジュアリー』というスタンスを取っている。【カンファの風景】
COH( 排卵誘発)の蓋の中で起きていること(CD2→CD8→CD12)
話を戻そう。
CD2から内服のみでゆっくりと内服のみで排卵促進をして様子をみてCD5あたりから火力をましてゆく。
内服に加えて、FSH注射をフラット容量で乗せてゆく。
このCD2-CD8までが「焼きのフェーズ」だ。卵子はまだ動かないから卵胞サイズの成長をねらっての刺激期間だ。
そして実施的なクライマックスが来る。ClimaxはトリガーをCD12で引いてから採卵(OPU)のCD14ではない。
その前に起こる。 CD8からCD12のこの区間だ。
なぜか?

CD8-CD12の期間は、「焼きのフェーズ」から「蒸しのフェーズ」に変わる。
これが蓋の中で行われていることだ。
卵子の成熟のスイッチが入る。餃子で言ったら「焼きフェーズ」はCD8でおわり、そこから「蒸すフェーズ」がスタートする。
文字通り卵胞の中で卵子が小籠包のように蒸されていき、卵子が成熟し始める。
※アンタゴニスト法だと見た目はまだGV卵のフェーズだが・・中身のことを言っている。
(本当は、LHホルモンの動きを書きたいが、長くなり論点がずれるので別のblog記事で書くことにしよう。)
このように、焼きから蒸しにフェーズが変わり、卵子が成熟していく。卵胞の成長スピードも加速していく。
教科書では1日に2mm成長すると書いてあるのをみたことがあるだろうが、あれは標準の目安にしかならない。
もっと勢いよく成長する場合もあるし、スローな成長する卵胞もある。エコーだけは卵子が成熟したかどうかはわからない。
餃子でいったならば、「音」を聞けというのだろう。
音は波形で表せるからその波形を想像しながらホルモン値の推移をみてゆく
そんな感じだろうか?!
4章:COHの蓋の中に・・観察!主治医は何を見て、何を根拠に判断しているか?
前章(3章)では、蓋の中で何が起きているか(現象の説明)を書いた。
この章では、主治医が複数のFACT(卵胞径、E2、LH、P4、成長速度、左右差など)を、どう組み合わせて読んでいるか?書いて置きたい。
CD8-CD12だ。
プロは時計を見ない
プロと仕事をしている忙しい主婦とでは、 決定的な違いがある。
家庭でレシピ通りに餃子を焼く人は、時計を見る。「中火で4-5分」。だが、プロの料理人は時計を見ない。
音の変化、縁の色、立ち上る湯気の質だけを見て、蓋を開ける瞬間を決めている。
これは医師も同じだ。CD8やCD12という日数は、家庭の主婦にとっての「4-5分」に過ぎない。
医師が本当に読んでいるのは、その日数の中で起きている変化そのものである。
数値ではなく、数値の関係性を読む
ここは最大の山場だ。
医師は、この期間で薬剤を増量するか?中身の変更するか?それともフラットでいくか?まず決めたい。
卵胞の大きさだけでなく、複数のFACTの関係から、見えない卵子の状態を推測している。
蓋の中で行われてる大ドラマ「卵子が成熟しだストーリー」を観ている。
卵胞と卵子は同じでない。でもエコーでは卵子は見えない。
餃子だと卵胞=皮、卵子=餡。外側が整っていても、中が適切とは限らない。それと同じように。
だから、エコーを補助として瞬間のホルモン数値ではなく、数値の関係性を読む。
具体的には、
卵胞径・E2・LH・P4・成長速度・前周期の反応…単独ではなく組み合わせで読んでいる。
ホルモンと表裏一体である。ホルモン受容体(=レセプター)の存在・・見えないものをみている。
凸凹ホルモン値 ↔ 凸凹ホルモン受容体
(見える) (見えない)
医師の頭の中にある3つの問い(CD8-12)
これは、ケース例で書いている。 またCD8内診というもの刻まない先生もいる。誘発方法が違うから一律でない。
①特に高齢の患者だとLHが変なタイミングであがってきたりしてないか?
▶アンタゴニスト製剤(排卵抑制)をいれるタイミングはどこか?まだ後ろに引っ張られるか?
早めにいれて卵子は失速しないか?早めにいれてそれをカウンターでカバーするために注射を強くするのは
裏目にでないか?など。
②E2の伸びは、これから刺激をいれていく上で、ER(=E2受容体)は確保できているか?
それがないと刺激してもE2が反応しない。そして刺激空振りに終わってしまう。
空振りをさけるためにはどうしたらいい?
③卵胞がまだ小さいのに・・高齢患者でよくある「早期黄体化」でP4が変なタイミングであがってきて
卵子にストレスを与えないか?
▶この「早期黄体化」については、実はここ数年、学会のレビューでも議論が進んでいる、大きなテーマだ。
深く語りだすと、この章だけで終わってしまう。だから、ここでは種だけ置いておく。続きは、また別の記事で。
医者たちはみんな同じ考えを持っているわけではない。あたりまえだ。
したがってCD8-12の蓋を閉めているときに頭の中で考えているとは一律じゃない。
さっきの餃子の女将のように、敏感な医者はいるという話をしている。
火加減、水加減に耳をすましみえないものをみるチカラだ。
問いは、あなたの中に生まれている
医師の頭の中にある3つの問いをサンプルで書いてみたが
患者さんは、うちの主治医もこの位緻密にみてくれているのだろうか?と思う人もいるかも知れない
医師は、聞かれていないことを説明しない。これは怠慢ではない。
限られた診察の時間の中で、目の前の質問に答えることが、医師の誠実さの形だからだ。
けれど、ここまで読んだあなたは、もう昨日までのあなたとは違う。
何を聞けばいいのか、あなたの中に、既に問いが生まれ始めている。
大切なのは、あなたが発する質問という言葉は、相手(=主治医)のものだ。
だから 受け取る主治医の感情を想定しないと絶対にいけない。これがDr.コミュニケーションの難しさだ。
最終章:採卵で失敗しない為に、伝えたいこと・・・
この記事は、誰のために書いたか?
まずここまで、読んで下さった方に感謝します。
一つの記事を・・まるでカンファのように想定して書くというよりは
話しているからです。
この記事は一体誰のために書いてきたか?というと「高齢患者さんで空胞に悩んでいる方」でした。
自分が年齢が高いからそれは仕方ないと、絶対に思って欲しくはなかったんです。
対応策考えるまでに、空胞になるFACTとメカニズムを知って欲しかった。そしたら患者さんは自分で考え始める。
今度、診察室で主治医と話すときには何をきいたら自分の治療にプラスになるか?何を聞いたらマイナスになるか?
絶対に考えるようになると思う。そういうのを腐るほど見てきた。
蓋の中で、最も緊張する瞬間
今回 COH(=排卵誘発)もCD8-12
餃子もT8-12まで 進めてきました。絵で言ったらどちらもフライパンの上に蓋が乗っている状態です。
餃子づくりでも、皆様が一番緊張するMAXは、蓋をパカンとあけて・・
フライパン返しでひっくりかえして皿の上に乗せる時ではないでしょうか?
失敗が確定する時です。もっとも失敗はその前から始まっていたと話をしてきたつもりです。
餃子だったら、鍋に餃子が張り付いてスルっと剥がれないって最悪ですよね?
COHだったら、どこで今ままの刺激を切り上げて、いつ採卵するのか?決める時です。
体育会系とは、根性論ではない
次回の記事では、いわゆるClimaxの話をします。
料理人も主治医も今までは理系の頭でフライパンをみてきたが、ここから先は「体育会系」にならざるを得ません。
気合だ!気合だ!根性論で 上手にフィニッシュを迎えることができると思いますか?
「本当の体育会系」というのは、最後に決断をできるまでFACTを積み上げていくロジカルが必要です。
餃子の女将の話を聞いてもらって、彼女がサイエンティストとして冷静に事実だけを観察してきたのがわかると思います。
そして その女将はパカンと蓋をどのタイミングで、その後何をするのか?想像してみてください。
女将が最後に教えてくれたこと
羽根付き餃子は、ひっくり返す時に、「人柄」が出ると女将は私に言ってくれました。
「・・・え? 人柄?餃子に・・?」とポカンとして言ったら
女将は言いました。
「早く返したい人。怖くて返せない人。何度も皿の位置を直す人。
一度決めたら迷わずにパーンとひっくり返す人。
最後の一手には、その人の人柄が出るんだよ。」
私は思いました。ああ・・やっぱり採卵のトリガータイミングを決める時のDr.の心理と一緒だと思いました。
マニュアル通りにトリガーを決めるDr.は、やはり高齢患者の採卵で良好胚までつくるのは「ん?」と思ってしまいます。
次回の記事では続きを書きます。 (終)

